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声明・宣言

憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し、すみやかな撤回を求める理事長声明

  1. 政府は、本年7月1日、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定を行った。これは、従前憲法解釈上認められないとされてきた集団的自衛権の行使等を、憲法前文及び9条の改正手続を経ることなく、政府の解釈変更によって容認しようとするものである。
     政府は、今回の閣議決定は合理的な解釈の限界を超える解釈改憲ではなく、これまでの政府見解の基本的な論理の枠内における合理的なあてはめの結果であり、立憲主義に反するものではない、と説明する。しかし、今回の閣議決定は、歴代政権が一貫して行使できないとし、行使できるようにするためには憲法の明文改憲が必要であると繰り返し述べてきた集団的自衛権の行使を、憲法の明文を変えることなく認めようとするものであり、「これまでの論理の枠内」では到底説明がつかない。さらに、閣議決定後になされた安倍総理の国会答弁によれば、これまで憲法上認められないとされてきた集団安全保障の武力行使も容認されるとのことである。これは、憲法前文及び9条を書き換えるに等しく、まさに解釈改憲そのものである。
  2. 今回の閣議決定では、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」等の「武力行使の新三要件」が定められた。政府の説明によれば、これは従前の「自衛権発動の三要件」とは実質的に異ならず、憲法上の歯止めになるという。
    しかし、この「新三要件」は、従前の「我が国に対する急迫不正の侵害があること」という明確な要件を、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」により「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」にまで拡大した上、「明白な危険」の有無の判断は時の政府に委ねられ、恣意的な解釈の余地を残すものとなっている。加えて、昨年12月に成立した特定秘密保護法が施行されれば、一般の国民のみならず国会議員に対してすら、「新三要件」の具備に関する情報が秘匿される可能性があることからも、結局のところ「新三要件」は何ら武力行使の歯止めとはなり得ない。歴史上も、「集団的自衛権」の名の下に行われた武力行使が多数存在することを忘れてはならないのである。
  3. この閣議決定は、恒久平和主義を基調とする憲法前文及び9条に反するものであるとともに、政府自身が解釈改憲という手法によって厳格な改憲手続を定めた憲法第96条を事実上潜脱しようとするものであり、立憲主義に対する挑戦であると言わざるを得ない。
     当連合会は、2007(平成19)年7月27日の定期弁護士大会において、「日本国憲法の基本原理の堅持とさらなる実践を求める宣言」を採択し、憲法の基本原理である恒久平和主義が堅持実践されること及び全世界の人々が平和のうちに生存する権利を保障する憲法の崇高な理念が実現されることに向けて、全力を尽くす決意を表明した。   そこで、当連合会は、このたびの憲法違反の閣議決定に強く抗議するとともに、政府に対しすみやかな撤回を求めるものである。

2014年(平成26年)9月9日
北海道弁護士会連合会
理事長  中 村   隆

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