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道弁連大会

議案第1号(決議)

特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める決議

当連合会は、政府及び国会に対し、特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)を、直ちに廃止するよう求める。
以上、決議する。

2014年(平成26年)7月25日
北海道弁護士会連合会

提案理由

  1. はじめに
    当連合会は、2012(平成24)年定期弁護士大会において「秘密保全法に反対する決議」を採択し、2013(平成25)年には「特定秘密の保護に関する法律の制定に反対する理事長声明」を発表し、特定秘密の保護に関する法律(以下「本法律」という。)の制定に反対してきた。
    また、当連合会及び管内各弁護士会は、市民集会の開催やデモ行進、街頭宣伝活動、地方議会への反対決議の要請、道内選出国会議員への働きかけなど多様な活動を通じ、本法律の危険性を強く訴えてきた。
    しかしながら、本法律は、2013年12月6日に参議院の議決を経て成立し、同月13日に公布され、公布から1年以内に施行されることとなっている。
    本法律は以下に述べるとおり、日本国憲法に定められる基本的人権を侵害し、国民主権を形骸化するものであるから、施行することなく直ちに廃止されるべきである。

  2. 知る権利の保障を侵害し、国民主権原理にもとること
    国民主権の実現のためには、国政に関わる重要な情報を知る権利が保障されることが不可欠である。
    ところが、本法律において保護の対象となる「特定秘密」は法文上広範かつ不明確であることに加え、秘密指定の有効期間も最長30年と長期間である上、同原則に大幅な例外を加え、秘密指定の半永久化が許容されている。
    その結果、「特定秘密」の恣意的な指定をもたらし、本来当然に公開されるべき情報が長期間又は半永久的に開示されないおそれを否定できず、国民の知る権利を侵害し、国政参加を著しく阻害する。
    また、行政機関は「特定秘密」につき国会の国政調査権行使を拒むことができ、国会議員も処罰の対象から除外されていないため、国会議員が国民の代表者として十全に活動することが阻害され、国民主権が形骸化する危険性が高い。
    本法律審議過程の最終段階において「第三者機関」を設置する構想が出されたが、ここで検討されている第三者機関は、いずれも行政機関に設置されるか、総理大臣の諮問機関としての位置付けにすぎないものであり、秘密指定の適正を何ら担保するものではない。

  3. 処罰範囲が広範かつ不明確であること
    本法律は、「特定秘密」の漏えい行為や「特定秘密」の取得行為を処罰の対象とするが、そもそも「特定秘密」が広範かつ不明確であることから、「特定秘密」の漏えい行為や取得行為の範囲も曖昧である。さらに過失犯や未遂犯、共謀、独立教唆、扇動も処罰の対象とされているため、処罰範囲は極めて広範であり、かつ法定刑も最長で懲役10年と極めて重い。
    本法律のこのような「特定秘密」の曖昧さは罪刑法定主義に反するものであり、処罰の範囲の広範化・重罰化は報道機関による取材・報道の自由を侵害し、表現の自由、集会・結社の自由、学問の自由などの憲法上の諸権利に対する萎縮効果を生じさせることが強く懸念される。このような報道機関及び市民に対する萎縮効果は、国民による国政監視機能を弱体化し、国民主権を空洞化させる。

  4. プライバシー権を侵害すること
    さらに、本法律は、「特定秘密」の取扱者について、「適性評価」の名のもとに、犯罪・懲戒歴、薬物の濫用又は影響に関する事項、精神疾患に関わる事項、飲酒についての事項、信用状態といったプライバシー情報を調査することを定める。
    これらの調査では、行政機関の恣意的な判断によって個人の政治活動や思想信条など、さらには高度のプライバシーに踏み込む調査がなされる危険性が高く、プライバシー権や思想信条の自由を侵害するおそれがある。

  5. 国際人権水準に適合しないこと
    本法律は、国内ばかりではなく国際社会からも、国際人権水準に照らして問題があるとの批判を受けている。
    本法律は、「情報にアクセスする権利」を明確に規定した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)に抵触する。
    また、2013年に南アフリカのツワネで公表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(「ツワネ原則」)は、市民を国家安全保障上の脅威から保護する合理的な措置を確保しつつ、国家の情報への市民のアクセスを保障するための原則を定めるが、本法律は、秘密にしてはならない情報の規定や秘密指定解除を請求するための規定を欠き、他方で公務員以外の者にも広く刑事処罰を認めるなどの諸点において、ツワネ原則を満たしていない。
  6. 制定過程に問題があること
    本法律は内容のみならず、その審議過程にも極めて問題が多い。
    国会審議においては、法案内容の不備や不明確な点が次々と指摘され、国会内外で本法律について十分な慎重審議を求める声が高まっていた。
    それにも関わらず、政府・与党は衆議院特別委員会に引き続き、本会議においても採決を強行し、さらに参議院でも十分な審理を経ることがないまま強行採決の愚行を繰り返して、国会提出からわずか1か月余りで成立させた。
    これは多数決の前に議論を尽くすことを前提とする代議制、立憲民主主義への明らかな挑戦であり、絶対に認められない。

  7. まとめ
    本法律は、小手先の修正によって問題を払拭することは不可能なほど重大かつ多数の問題を孕んでおり、即時に廃止されなければならない。
    当連合会は、本法律の制定後も、「特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める理事長声明」を発表し、道内の地方議会に対して同趣旨の意見書採択を要請する等の取り組みを進めている。
    むしろ、今なされるべきは、現行の不十分な情報公開法制及び公文書管理法制を改正することにより、市民が情報にアクセスできる環境を整備し、市民の熟議によって、より成熟した民主主義社会を実現することである。
    よって、当連合会は、市民の声を無視して成立した、基本的人権を侵害し、国民主権をはじめとする憲法上の諸原理をないがしろにする本法律を直ちに廃止するよう求めるとともに、今後とも引き続き、特定秘密保護法反対運動で大きなうねりとなって示された市民の力の一翼となり、市民と連携して特定秘密保護法の廃止に向けた取り組みを継続していく。
    以上の理由から、本決議案を提案する次第である。

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