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道弁連大会

議案第1号(決議)

再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進に向けた取組みに関する宣言

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方太平洋側を中心に、甚大な被害を生じさせた。のみならず、その結果発生した福島第一原子力発電所の事故により、国策として推進されてきた原子力発電が、極めて重大かつ回復困難な被害を生むことを目の当たりにした。この事故に起因する放射性物質の環境への放出により、大気汚染、土壌汚染、及び水質汚染等がもたらされ、広範囲にわたって、地域住民が避難を余儀なくされている。その結果、多くの住民が、長年住み慣れた土地を離れ、生業を失い、自己の生活基盤のみならず、地域のコミュニティまでをも喪失することとなった。私たちは、このように原子力発電が人権侵害の危険性を内包することを再認識するとともに、今後、このような悲惨な事故が二度と起きないよう、人権擁護の立場に基づき、原子力発電からの脱却を目指さなくてはならない。

また、エネルギーは、私たちが豊かな生活をおくるために、必要不可欠な要素であるが、産業革命以降に利用してきた石油や石炭といった化石燃料の大量使用により、二酸化炭素等の温室効果ガスが大量に大気中に放出され、地球温暖化に繋がっていることは、各種研究結果からも明らかとなっている。
さらに、全世界の化石燃料の可採年数は、2009年末時点で、石油が45.7年(オイルサンドを除く)、石炭が119年とされており、決して遠くない将来において枯渇が見込まれている。また、我が国のエネルギー自給率は、原子力発電を含めても18%、原子力発電を入れなければ4%に過ぎず、自給率の向上もエネルギー安全保障の見地からは焦眉の課題といえる。
したがって、私たちは、このようなエネルギー資源の危機的状況を自覚し、持続可能なエネルギー供給体制への転換を図って行かなければならない。そして、そのためには、自然現象に由来し枯渇することがなく、温室効果ガスの排出が少なく、純国産のクリーンなエネルギーである「再生可能エネルギー」を推進していくことが急務である。
この点、北海道は、広大な面積の中に海洋・平野・山地・河川等多様で豊かな自然環境を有するとともに、第1次産業も盛んであって、再生可能エネルギーのポテンシャルも極めて大きい。また、再生可能エネルギーの地産地消が実現した場合には、地場産業や雇用の創出等といった、副次的効果も認められる。
他方、使用するエネルギー源が何であれ、エネルギーの使用を可能な限り抑える省エネルギーの観点も重要である。省エネルギーは、省力化されるエネルギー分を作りだすことと同じ効果を生むのであって、再生可能エネルギーへの転換と合わせて積極的な取組みがなされる必要がある。

このように、私たちは、原子力発電からの脱却、地球温暖化の防止、エネルギーの安全保障、及び持続可能なエネルギー供給体制への転換等の観点から、再生可能エネルギーの活用を強力に推進し、使用エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を高め、合わせて使用エネルギーの省力化に努めなければならない。
当連合会は、今回の原発事故を契機に、このような取組が、憲法第13条に定める幸福追求権、及び憲法第25条1項に定める生存権の人権擁護に結び付く重要な取組みであることを改めて認識した。よって、当連合会は、このような認識のもと、会の内外に向けて、再生可能エネルギーの推進と省エネルギーの促進のための諸活動を積極的に行うものとし、以下の各事項につき、その実現に向けて全力を挙げて取り組むことを宣言する。

  1. 当連合会は、再生可能エネルギーの推進と省エネルギーの促進に向けて、政府や地方自治体等に対して、各種制度のあり方、組織体制の構築、自治体構造物における再生可能エネルギーの活用、及び再生可能エネルギーの有効利用等に関して、積極的に提言を行う。
    特に、北海道に対して、 (1)熱エネルギーの有効利用を促進する施策を講じること (2)再生可能エネルギー推進のための情報共有と情報提供に努め、その担当部署として再生可能エネルギーのシンクタンク的役割を担う部署を設置すること (3)北海道の維持・管理にかかる構造物における太陽光発電設備やコジェネレーション設備等の再生可能エネルギーの導入、及び北海道の遊休地等を利用した再生可能エネルギーの生産を促進することを求める。
  2. 当連合会は、所属する弁護士会とともに、それぞれの実情に応じて、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組むとともに、各種委員会活動や弁護士会館の維持管理等の弁護士会業務における省エネルギー(省資源、省電力消費を含む)の目標を定め、その達成のために必要な措置を講じる。また、省エネルギーや再生可能エネルギーについての情報収集と会員への情報提供を行い、会員の業務や日常生活においてこれらを実施しやすい環境を整えるべく努力する。

2012年(平成24年)7月20日
北海道弁護士会連合会

提案理由

  1. 東日本大震災と福島第一原子力発電所事故
    2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方太平洋側を中心に甚大な被害を生じさせた。そして、同震災により福島第一原子力発電所の全電源が喪失し、炉心や使用済み核燃料の冷却ができず、水素爆発や炉心溶融という極めて重大な事故が起こり、大量の放射性物質が放出された。
    その結果、大気汚染、土壌汚染、及び水質汚染等がもたらされ、広範囲にわたって、地域住民が避難を余儀なくされている。多くの住民が、長年住み慣れた土地を離れ、生業を失い、自己の生活基盤のみならず、地域のコミュニティまでをも喪失することとなった。低線量被曝については、現在の医学でも放射性物質による人体への影響は明らかになっていないが、長期間の経過によって初めて癌等の影響が現れると考えられている。そのため、放射性物質との直接の因果関係が曖昧とならざるを得ず、その影響が無視または軽視されてしまいかねない恐ろしさを秘めている。
    また、特に農業、漁業等の従事者は、原発事故により「獲っても売れない」事態に陥り、風評被害も深刻なものとなっている。
    野生動植物等の自然環境や生態系に与えている影響は、未知数ながら、既に計り知れないものとなっている可能性があり、今後徐々にその影響が明らかになっていくと見込まれる。
    このように、原子力発電は、一度でも重大な事故が起きれば、取り返しのつかない被害が生じることが改めて浮き彫りとなった。
    そもそも原子力発電は、稼働によって必然的に発生する使用済み核燃料の処分方法が定まらない中で見切り発車的に開始された発電方法であり、これが「トイレなきマンション」と揶揄される所以である。使用済み核燃料の処分については、直接処分(地層処分)や核燃料サイクル計画等の方法が議論されてきた。しかし、使用済み核燃料の地層処分にあたっては、我が国には地形や地層の点からこれに適する場所はないと考えられる。また、これまで進められてきた核燃料サイクル計画も、度重なる事故の発生等から、事実上頓挫した状況にある。
    このように、重大事故以外でも、稼働の前後に渡り、多くの解決困難な問題を抱える原子力発電を今後も選択することは、物言えぬ次世代に負の遺産を押しつけることに他ならない。
    私たちは、福島第一原子力発電所の事故によって、原発事故が広い地域にわたって、世代を超えた、極めて深刻な被害をもたらすものであることを目の当たりにした。そして、原子力発電に「安全神話」など存在し得ないことも改めて認識するに至った。よって、二度とこのような悲惨な事故を起こさせないためにも、利便性を優先して原子力発電所により生産されたエネルギーを使用し続けてきた私たちは、これを機に早急に原子力発電からの脱却を図らなければならない。
  2. 地球温暖化防止の要請
    現在、世界的に地球温暖化が進行し、干ばつや豪雨等異常気象や海水面の上昇等の現象が発生しているのは周知のとおりである。この地球温暖化の原因である二酸化炭素等の温室効果ガスの排出は、様々な面で化石燃料に依存した社会がもたらしたものである。したがって、地球温暖化をこれ以上進行させないためには、エネルギーの面でも、化石燃料に依存せず、温室効果ガスの排出の少ないエネルギー源を選択するよう要請されているといえる。
    この点、日本弁護士連合会は、地球温暖化が人権問題であるとの認識のもと、持続可能な低炭素経済の構築に踏み出し、これを将来世代に引き継いでいかなければならないとして、地球温暖化の危険から将来世代を守る宣言を平成21年11月6日付けで行っている。当連合会としても、この宣言に沿って、化石燃料に頼らず、持続可能・再生可能なエネルギー源への転換が図られるよう努力しなければならない。
    一方、化石燃料自体も、今後永続的に使用していくことは困難な状況にある。資源エネルギー庁のエネルギー白書(2010年度版)によれば、全世界の化石燃料の可採年数は、平成21年末時点で、石油が45.7年(オイルサンドを除く)、石炭が119年とされている。産業革命以降の歴史がわずか250年程度であり、発展途上国で懸念される人口爆発も考慮すると、これらは決して遠い将来の危機ではない。我々の子供や孫が経験するであろう近い将来に起こりうる危機なのである。さらに、資源不足は、資源価格の高騰に繋がり、購入資金のない者は最低限のエネルギーをも享受できない時代が訪れるおそれさえある。
    このような観点からも、持続可能・再生可能なエネルギー源への転換は急務といえる。
  3. 再生可能エネルギーについて (1)再生可能エネルギーの導入の必要性
    再生可能エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、地熱、雪氷等の自然の力で反復的に補充されるエネルギー資源と、間伐材や家畜糞尿を利用したバイオマスのように循環可能なエネルギー資源である。このような再生可能エネルギーは、真に持続可能な低炭素社会の実現に向けて柱となるべき、クリーンで、かつ純粋国産のエネルギー供給源であって、エネルギー安全保障の観点からも、近年ますますその重要性は増している。
    (2)北海道における再生可能エネルギーのポテンシャルについて
    我が国においては、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルが十分に高いことは様々な研究で示されており、とりわけ北海道は広大な面積を有し、周りを海洋に囲まれ、海洋・平野・山地・河川等の環境相が豊富であり、海・水・風・日光といった自然エネルギーは膨大である。また、林業や畜産も盛んであり、カーボンニュートラルや生物地球化学的循環の点で持続可能なバイオマスエネルギーのポテンシャルも大きい。特に風力発電については、環境省の調査によると、設備容量にして、陸上で全国約2億8000万キロワット分を導入できる可能性があり、北海道には、その内半分の1億4000万キロワット分が存在しているとされている。また、太陽光発電についても、北海道経済産業局のまとめによれば、1キロワット当たりの年間予測発電量により道内外12の主要都市(東京、大阪、名古屋、広島、福岡、札幌、函館、旭川、釧路、帯広、北見、稚内)を比較した結果、最も多かった広島(1135キロワット)に次いで、2位が帯広(1119キロワット)、3位が釧路(1116キロワット)、5位が札幌(1047キロワット)となっており、梅雨のない北海道では、太陽光発電におけるポテンシャルも高い結果となっている。
    このように、北海道は再生可能エネルギーのポテンシャルの高さが際立っており、その住民である我々は、この再生可能エネルギーを賢く、効率的に利用していくべきである。そして、それが可能であることは、既に、産学官の連携により再生可能エネルギーを導入し、成果を上げている例も数多く存在していることからも明らかである。
    (3)再生可能エネルギーの副次的効果と地域を主体とするエネルギー供給体制の必要性
    また、再生可能エネルギーは、地場の自然現象等の特性を利用するものであり、必然的に地場産業として成立することになるから、地域経済の活性化や雇用の創出にも繋がる。すなわち、各地域に適した種類が選択される結果、そのエネルギー源の収集や、施設の設置、維持、運営といった各場面において、当該地域内の物的・人的パワーを要することになる。
    そして、さらに、地場で生産されたエネルギーが地元で消費される場合(エネルギーの地産地消)には、エネルギーの自給自足に向けた第一歩となるとともに、「エネルギー生産と消費の地域内循環」が、そのまま「経済的プロフィットの地域内循環」をもたらすことにもなる。その意味では、過疎対策の効果も期待できるといえる。
    また、自然エネルギーは、自然発生するものであり、かつ生成密度が小さいため、多地域にまたがって、小型化及び分散化されることになるが、その結果、再生可能エネルギーが普及すればするほど、供給の多面性が確保されることになる。
    このように、再生可能エネルギーは、生産過程、消費過程、産業育成、及び経済効果等様々な面において、地域及び地域住民の生活に密接な影響を与えるものといえる。よって、再生可能エネルギーの推進にあたっては、地域を主体とする新しいエネルギー供給体制を構築することが不可欠であり、その意味では、地域住民、地場企業はもちろんのこと、地域自治体の役割も極めて重要である。
  4. 北海道のこれまでの取組み
    上記のように、地域を主体とする新しいエネルギーの供給体制を構築するにあたって、最も重要な役割を担うべき組織の一つが北海道である。この点、2001年1月1日から施行されている、北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例の附則には、こう記されている。
    「産業革命以降、世界の経済発展をエネルギー面において支えてきた石炭や石油などの化石燃料は、今日、その近い将来における枯渇や使用に伴う地球環境への影響が懸念されており、その使用を抑制することが求められている。
    一方、二十世紀の半ばに実用化された原子力は、発電時に温室効果ガスを排出しないことなどの優れた特性を有している反面、放射性廃棄物の処理及び処分の方法が確立されていないことなどの問題があることから、過渡的なエネルギーと位置づけられる。
    私たちは、積雪寒冷な北海道においてエネルギーが社会経済の健全な発展と生活の安定のために不可欠な要素であることを深く認識し、脱原発の視点に立って、限りある資源を可能な限り将来に引き継ぐとともに、北海道内で自立的に確保できる新しいエネルギーの利用を拡大する責務を有している。
    このため、私たちは、エネルギーの使用が人の様々な活動から生じていることを心に留め、社会経済活動や生活様式の在り方を見直し、エネルギーをむだなく大切に使用するとともに、北海道の自然や産業に根ざし、環境に優しい新しいエネルギーを育むことにより、人と自然が共生し、環境と調和した社会を築いていくことが必要である。
    このような考え方に立って、エネルギーの使用の効率化と新しいエネルギーの開発や導入に積極的に取り組むことにより、エネルギーの需給の安定を図るとともに、持続的発展が可能な循環型の社会経済システムをつくり上げるため、道民の総意としてこの条例を制定する。」
    このように、北海道は、自ら脱原発を謳いつつ、エネルギーの需給の安定と、持続的発展が可能な循環型の社会経済システムを構築することを、目標として掲げている。北海道は、この条例に基づき、総合的、計画的な推進に取り組み、また2008年7月のG8北海道洞爺湖サミットを契機に「北海道環境宣言」をまとめ、2009年3月には「北海道地球温暖化防止対策条例」を制定したほか、同年8月には「北海道エネルギー問題懇談会」を開催し、北海道に相応しいエネルギー需給や目標設計、省エネルギー・新エネルギーの促進に向けた戦略的な取組み等に関する提言をまとめる等してきた。しかしながら、その目標が達成されたといえるような、満足のいく成果をあげられているとは言い難いのが実情である。
  5. 北海道省エネルギー・新エネルギー促進行動計画
    その一方で、国は、福島第一原子力発電所の事故によるエネルギー問題への国民的関心の高まりを受け、ようやく再生可能エネルギーの促進に向けて、本格的な施策に乗り出した。再生可能エネルギーを促進するためには、実効性ある固定価格買取制度の確立や、エネルギー製造・供給事業の自由化と再生可能エネルギーの送配電網への優先的接続を保証するための発送電の分離及び送電網の公的管理等が必要となるが、このうち、固定価格買取制度について、2011年8月に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再生可能エネルギー買取法)が修正の上成立し、2012年7月1日から施行されているところである。この制度は、経済産業省令に基づき経済産業大臣の認定を受けた発電設備により発電した電気につき、電気事業者に、一定期間・一定価格での全量買取義務を負わせる制度である。発電による利益を一定期間保証することで、独占電気事業者以外の新規参入にインセンティブを与えて、再生可能エネルギーによる発電を増加させる極めて効果的な制度である。この結果、北海道においても、大規模資本によるメガソーラーや風力発電施設の設置、及び道民の各住宅における太陽光発電パネルの設置等により、再生可能エネルギーは大幅に促進されることが予想される。
    このような国のエネルギー政策をめぐる情勢変化等を踏まえ、北海道経済部環境・エネルギー室は、北海道が取り組むべき方向性と目指す姿を明らかにすべく、2012年3月、北海道省エネルギー・新エネルギー促進行動計画第Ⅱ期(以下「計画」という。)を策定するとともに、同年4月4日付で、平成24年度省エネ・新エネ関連施策の展開方針を打ち出した。
    計画においては、「エネルギー需要家の意識改革に向けた取組~省エネルギーの促進」、「多様なプロジェクトの早期実現に向けた取組~新エネルギーの導入加速」、「エネルギーの地産地消に向けた取組~地域における新エネルギーの導入促進」、「民間活力の積極的な活用に向けた取組~関連産業の振興」を4つの柱とし、同年度に重点的に取り組むべき施策を取り決めた。
  6. 計画の遂行にあたっての要望
    このような計画の策定および計画の内容は、全体として評価できるものである。しかしながら、その実践にあたっては、道内の実情と今後想定される問題を踏まえ、以下の事情が考慮されるべきである。 (1)熱エネルギーの有効利用を促進する施策を講じること
    北海道では、本州ほか他の地域に比べ、より多くのエネルギーが暖房のために消費されている。そのため、発電技術や発電設備のみに拘泥せず、省エネルギー・再生可能エネルギーの両面から、熱の有効利用を重点的に考えるべきである。
    北海道では、その寒冷な気候に対応して生活してきた歴史があり、培われてきた住宅や建造物における熱利用や断熱技術は、他の地域より秀でているといえる。このような特殊性をさらに生かすべく、例えば、新築建造物については高い断熱性能の基準を設ける、既存建造物については断熱性能の診断を行い、断熱改修を促すよう情報提供、及び補助金等の措置を取る等、積極的な取組みを行うべきである。また、薪、木質チップ、木質ペレット等の木質バイオマスエネルギーによる暖房設備の導入を促すべく、資源の供給確保のための情報提供や仕組み作りも必要である。さらに、天然ガスまたは木質チップを燃料として地域の小さな設備で発電しながら、その熱を、配管を通じて地域暖房・給湯に利用するコジェネレーション発電設備も積極的に設置していくべきである。この設備はドイツや北欧諸国で広く導入されており、温室効果ガス削減の主要な手段となっているところ、暖房需要の多い北海道では特に有用な設備である。
    計画においては、省エネルギー促進や再生可能エネルギーの推進に関して、電気利用が中心となっているところ、効率的なエネルギー利用の観点からは、電気への変換効率よりも熱の直接利用の方が有効であることから、熱の有効利用を促進していくべきである。
    (2)再生可能エネルギー推進のための情報共有と情報提供に努めること
    道内の複数の市町村においては、家畜の糞尿や、林地残材等の資源を有効活用し、電気及び熱として効率的に利用する設備の導入例も既に多数存在するところであり、これらの取組みや実践例を、その他の市町村とも情報を共有し合うことで、資源の有効かつ効率的な活用が拡大していくことが期待される。これらは省エネルギーにも繋がることであり、極めて重要な要素である。したがって、これらを拡大していくために、北海道が主体となって、市町村同士の連携を確保する場が必要である。
    また、再生可能エネルギーの推進にあたっては、道において、各市町村の実践例を収集・蓄積し、そのノウハウを希望する市町村へ情報提供する役割も当然に重要となる。これは、計画中にある「エネルギーの地産地消に向けた取組み」に直結することであるが、地域の取組みの契機となるようエネルギーの資源総量等の基礎的データ、発電システム等に関する各種情報、および各種補助制度等についての情報提供を行ったり、事業を企画している市町村や団体に対して、専門家等の人材を派遣したり、事業計画の検討に向けた相談機能の整備、事業可能性調査への支援を行うといった支援方法は、市町村レベルでの再生可能エネルギーの促進に極めて有効と認められる。
    上記のような市町村相互の情報共有や、市町村等への情報提供を行うにあたっては、再生可能エネルギーに関しての様々な情報集約や専門的知識・ノウハウの習得が必要となる。よって、北海道の機関として、再生エネルギーのシンクタンク的部署の設置が望まれるところである。
    (3)北海道の構造物における再生可能エネルギーの導入を促進すること
    計画の中では、施設の新築・改築にあたり、省エネルギー型機器や太陽光発電設備、コジェネレーション等の新エネルギーを利用した設備・機器の導入に配慮するとされている。北海道のように、本庁や道内14の各振興局、さらにそれらが管轄する各施設が相当数ある組織においては、その使用エネルギーも相当な規模であるほか、市町村や道民に与える影響も小さくない。したがって、北海道が、各施設にこれらの機器・設備を設置していくことは、使用するエネルギーの自給になるだけではなく、その燃料の需要増加による再生可能エネルギー関連事業への支援や、市町村や道民への啓発にも繋がりうる。したがって、必ずしも新築・改築時に限らずとも、こういった機器・設備の導入を北海道として優先的かつ積極的に進めていくべきである。
    また、自治体による再生可能エネルギー施設の設置については、既に札幌市等においても行われているところである。北海道においても、再生可能エネルギーの推進と啓発、及び道有資産の有効活用(売電による収益)の観点から、遊休地等での太陽光発電や風力発電等の施設の設置を率先して行うべきである。
    特に、本年7月からの固定価格買取制度の実施により、道内でも大手資本による再生可能エネルギー投資の動きが活発となっている。道や市町村には、これらの固定資産税収入を見込むだけではなく、道や市町村自体が遊休地を利用して再生可能エネルギー設備を設置し、または第三者の設備に出資することにより売電利益を得るなど、地域に利益が配分されるよう積極的な取り組みをすることが期待される。
  7. 当連合会の取組み
    以上のエネルギー問題をとりまく状況に鑑み、当連合会も、北海道への要望を行うだけではなく、自らこれらを後押しする必要があり、省エネルギーの実践や再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組むことが期待されている。そして、当連合会としても、またその構成員である我々弁護士個々人としても、これらのことを再認識し、行動に移すことが重要である。
    この点、日本弁護士連合会をはじめ、全国単位会の中には、既に環境宣言を行い、積極的に環境保全に取り組む一環として、環境マネジメントシステム(団体の運営に当たって、環境への負荷を管理・低減するために環境方針を策定し、具体的な目標を掲げて活動する仕組み)の一つであるKESを取得しているところもある。また、沖縄弁護士会、京都弁護士会、大阪弁護士会、そして被災地の福島県弁護士会においては、会館に太陽光発電設備を導入し、弁護士会館の運用で使用する電力の一部を太陽光発電でまかなっている。

    このように、日本弁護士連合会や全国の各単位会は、先進的に環境保全や再生可能エネルギーの導入・促進に取り組んでいるところ、再生可能エネルギーのポテンシャルがとりわけ大きい北海道において、そこで活動する当連合会が再生可能エネルギーや省エネルギーの推進に向けて自ら行動をすべき必要性は高い。

    そこで、当連合会に属する各弁護士会においても、それぞれの単位会の実情を踏まえながらも、各種委員会活動や会館の維持管理等の弁護士会業務における現状の消費エネルギーを算出し、その削減目標を定めて、エネルギーの省力化に努めることが期待されている。例えば、蛍光灯をより電力消費量の少ないLEDまたは高効率な蛍光灯(FHF)に切り替えることは、検討に値する省エネルギーの方法である。また、年間の使用ピーク電力(最大デマンド)に上限を設けてコントロールするデマンドコントローラーを設置することで、節電だけでなく経費の大幅な削減につなげることも可能である。

    合わせて、再生可能エネルギーの導入にも積極的になるべきである。例えば、各単位会の会館に太陽光発電設備を設置することは、発生した電力を会館の運用で使用する電力の一部として利用し、もしくは売電できるだけではなく、同時に設置される発電量・電力消費量モニタ(リアルタイムモニタ)により会員や職員の節電意識の向上につながることが期待できる。
    他にも、各単位会管内の省エネルギー・再生可能エネルギー導入事例や活動団体、個人等の情報を会員に提供することにより、会員に対し、日常業務や私生活の場での、省エネルギーや再生可能エネルギーの利用を促すことが可能である。例えば、実際に事務所や自宅で節電の取組みをしている会員、高断熱住宅でわずかな暖房費の負担で生活している会員、自宅に太陽光パネル、ペレットストーブ、ガスコジェネレーション、家庭用燃料電池などの設備を導入した会員などの情報を会員同士で共有するだけでも、経済性などを判断する有用な情報や選択肢となり、会員が新たにこうした取組みを行いやすくなる。
    当連合会と単位会、さらにその会員としても、自発的にエネルギー問題の情報を発信し、関心を持つことが、より安全・安心な再生可能エネルギーの普及に資する一歩になると考える。
  8. よって、当連合会は、再生可能エネルギーと省エネルギーの推進を求めるべく、宣言する。

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